NHKラジオ第二『ラジオ英会話 2018年度』がすごい

 このブログの著者は、英語教師の大西泰斗&ポール・クリス・マクベイコンビのファンです。
 二人は『ハートで感じる英文法』や『一億人の英文法』などで定評を得た著者ですが、特に自分はNHKテレビの教育番組シリーズ『しごとの基礎英語』で、英語の素養ほぼゼロだった篠山輝信さんを英語のデキる人に育て上げていく大西先生の真面目で理論的な態度に、強い影響を受けました。(アキが卒業してからの、おもてなし英語にコンセプトが変わってからは見なくなってしまいましたが)

一億人の英文法 ――すべての日本人に贈る「話すため」の英文法(東進ブックス)

一億人の英文法 ――すべての日本人に贈る「話すため」の英文法(東進ブックス)

 その大西先生が、もともとのコンビであるマクベイ氏と共に、2018年04月より一年間、講座を受け持つことになりました。遠山顕さんが長らくやってきた枠の後継となります。*1

www.nhk-book.co.jp

また、04月上旬の放送に間に合わなかった方へ:音源はiTunesなどで遡って購入することも可能です。*2

 放送枠は平日月-金、0645時,1225時,2145時からの15分間。日に3回ずつ放送されます。週末の日曜には1630時から1745時まで連続5回ぶんの再放送もあります。また、NHKラジオ英語講座のアクセシビリティが今年度から格段に改善されたことは、先日『実践ビジネス英語』を紹介した時に書きました。この講座も同様の恩恵を得ており、一週間前の講座をストリーミング再生で何度でも聴くことができます。Webブラウザでもアプリでも、どちらでもお好きな方をどうぞ。

 さて、04/23時点でLesson 16まで進んでいるこの『ラジオ英会話』ですが、本当に、ちょっとでも英語で挫折感を得たことがあるひと全員に聴いてほしい出来です。過去の大西&マクベイ仕事の中でも、最も入りやすく、また最も丁寧なバージョン、『一億人の英文法』以降に行われたさまざまな仕事の総決算といえるような仕事になってる気がしてなりません。

 自分は、英語について学び直したい、苦手意識がある、という友人に、その友人ごとに応じた勉強法や教材を提案することがあります。今まではそれぞれの悩みに応じた、さまざまなコンセプトの教材をべつべつに提案してきました。でも、今年度は違う。みんな2018年度の『ラジオ英会話』を聞けばいい。これを通った後に、それぞれ必要なことに進めばいい。

 自分だったら、『DIALOGUE1800』*3を周回したり、高校三年次にやり残した悔いのある『DUO 3.0』*4をおさらいしたり、『実践ビジネス英語』の2018年度版を並行して聴いたり、普通に英語論文に取り組んだりと、色々な手があります。それでも、英文出力のメンテナンスとして、『ラジオ英会話 2018年度』はものすごい好影響を与えてくれてます。難易度が高い低いじゃない、英語の骨格、基底部分と言えるところを、何度でも辿り直させてくれる。こんな教材が毎日聴ける今の中高生が本当に羨ましい。

 ただ、大西メソッド*5の考え方は、これまでの伝統的英文法のカリキュラムと具合がちょっと違います(同時に、その従来の英文法解説と異なる仕組みが、大西&マクベイ式のアプローチのいいところでもあります)。『一億人の英文法』の時は総花的な書かれ方をしていたので気づけていなかった所も多いのですが、04月中だけでも「おやっ」と思ったところがあるので、何点かに着目してメモしておきます。

▼ i. 「文型」に関する語彙を、一通り書き換えている。

 たとえば「五文型」といえば、SV, SVC, SVO, SVOO, SVOC ですね。これらを大西先生も退けていませんが、言い方を変えている。

旧来の言い回し 略語 大西メソッド
第1文型 SV →【自動型】
第2文型(be動詞) SVC (S be C) →【説明型】
第2文型(一般動詞) S do C →【オーバーラッピング】
第3文型 SVO →【他動型】
第4文型 SVOO →【授与型】
第5文型 SVOC →【目的語説明型】

 このあたりは、多くの高校英文法書でも似たパースペクティヴで解説していることを術語として規定しているだけですので、まあわからなくもない。*6

▼ ii.「指定ルール」と「説明ルール」という説明が導入されている。

 これも『一億人の英文法』の時点では既に全面的に採用されていましたが、『ラジオ英会話』のテキスト各月号の冒頭でも必ずこの注釈が入っています。

名称 意味
指定ルール 前に置いた修飾語句は後ろを指定する。
説明ルール 後ろに置いた修飾語句は前を説明する。

 この2つは、私達が英文解釈の時に「前置詞句」をどう位置づけるか、とか、副詞が後ろにぶら下がってるときと前に挟まれているときとでどう読み方が変わってくるか、といった、各単元ごとに悩まされてきた問題を、「指定ルール!」「説明ルール!」の二パターンで処理していきましょうね、というマニフェストになっています。

▼ iii. 履修済のカリキュラムをほんの少しだけ超えた、やや複雑な構文が、英作文演習時に毎回登場する。

 今回の講座では、個々の細かい構文の解説については、ラジオ本編ではそこまで厳密に行いません。そうした方針もあってか、英作文演習の難易度が、カリキュラムそれ自体の解説よりも若干高度(というより、少しばかり抜き打ちテスト的な難しさ)になっています。手元の素材だけではそういう文は目指せないだろう、というような小技的な構文要素が、カリキュラムより先行する形で小出しに出てくるのです。これは高校英文法の復習にはちょうどよい歯ごたえなのですが、中学英文法の段階で色々抜けがある学習者にはちょっと不意打ち感があるかもしれません。
 具体的にどういった面が先出しになっているか、以下に幾つか列挙してみます:

  • SV (that) SV 【節を用いた複文の構成】*7
  • SV to ...【to不定詞】*8
  • Doing..., SV | SV doing… 【現在分詞による句の構成、あるいは現在分詞による後置修飾】*9
  • {名詞,動詞,形容詞,副詞}などが文要素{S,V,O,C,M,等々}と整合するかについての解説*10

 細かい説明は注釈に押し込めましたが、前半の文型の解説にとどめている段階でも、文法導入の小技を利かせていることが伝わってきます。ただ、中学英文法の中盤でも出てくる、語/句/節/文の区分を全然覚えていないと、もしかすると厳しい側面もあるのではないか? という気もしています。「複文」「句」「節」の位置づけについては、本年度ラジオ英会話本編の中で、別途解説回を設けてほしいなと思っている次第です。
 それはそれとして、ある程度の習熟度に到達している人にとっては、「初験で Grammar in Action 三題を完璧に英作文する」というチャレンジは、ちょうどよく歯ごたえのある作業になると思います。瞬間英作文的にもなかなか難しい表現が含まれていますし、失敗した時にNHKテキスト解説を読むと、「ああ、こういう文法項目、あったね!」とハッとさせられる率が高いです。*11

▼ iv. 分詞のフィールの説明が先、時制/態/分詞構文の説明は省略

 Lesson11-15の週で特に顕著でしたが、大西メソッドでは、時制、態(能動態/受動態)/分詞構文 といった、既存の英文法カリキュラムに沿った議論を行いません。代わりに、現在分詞 doing の気分、過去分詞 done の気分を説明します。
 聴いていたとき、「いや、たしかに『一億人の英文法』ではそういう説明していたけれども、文型の説明からみっちりやっていくこの『ラジオ英会話』でも、その荒業で突っ切るの!?」と、私は少しショックを受けました。
 ところが、実際にはそこまで破壊的な行いでもないのかもしれない、と思えてきました。たとえば I am keeping …… は、be doing という、僕らが「時制の表現(現在進行形!)」としてパッケージングされてきた表現をそのまま覚えてきましたが、「説明型(S be C)で、躍動感ある -ing形!」という発想であれば、I = keeping ... という気分に則って、自然に現在進行形の表現になる。*12
 I was injured… も同様。be done で「受動態!」と覚えておくのも間違いではないけれども、「I = injured な状態!」と考えても意味は通る。そしてこれらは、「準動詞としての現在分詞・過去分詞が共に形容詞的な意味合いを持つ」、という規則とも整合する。*13
 こんな風に、時制・態で“とりあえず、覚えろ”とされたものを後で準動詞で覚え直す、という手間を、大西メソッドでは省略しても構わないわけです。最初から現在分詞、過去分詞のエッセンスの部分を見据えて語り直している。
 従来の英文法単元の切り方とはかなり違うため、これまでに頑張って学校英文法を学んできたひとほど、「えっ、今どこ由来のなんの話してるの!?」という違和感は一定確率で出てきますが、それも大西&マクベイなりの文責を背負って、覚悟の上でやっているだろうということが、なんとなくわかってきました。

余談的感想:伊藤和夫の前期/後期になぞらえて

 おそらく、今回大西&マクベイが試みていることは、伊藤和夫にとっての『英文解釈教室』と『ビジュアル英文解釈』の関係みたいなのに近いのかもしれません*14。『一億人の英文法』で体系を示した後、『ラジオ英会話』で英文法の「厳密に排列された最新インストールパッケージ」を再構築しようと試みている。これは、伊藤和夫が『ビジュアル英文解釈』を、「やってることは英文解釈教室と同じだけれど、順を追えば英文法の体系が自然に身につくように工夫した」(大意)と位置づけたのにかなり近いように見えます。
 一年間の終わり頃に、どのような「最適な順路」が構築されているのか、一学習者として今から楽しみでなりません。

*1:遠山顕さんは、『ラジオ英会話』ではないものの、本人の名を関した別の看板番組ができ、そこで昨年度までとほぼ同じ構成の英会話番組を持っています。昨年度までのラジオ英会話が好きだった方はそちらをチェックしてみてください。NHK ラジオ 遠山顕の英会話楽習 2018年5月号 | NHK出版

*2:すでに05月ぶんのデータも、ページは準備されていたので貼っておきます。この記事を05月以降に発見した方はこちらもお使いください。

*3:

英単語・熟語ダイアローグ 1800 三訂版

英単語・熟語ダイアローグ 1800 三訂版

*4:

DUO 3.0

DUO 3.0

*5:成り立ちや貢献度を考えると「大西マクベイメソッド」と呼ぶべきかもしれませんが、便宜的に今はひとまずこう呼んでます。

*6:ただし、be動詞の扱いが軽いことによって、第2文型の一般動詞の扱いが、これまでの英文法解説ではあまり見られなかったような、斬新な説明になっています。Lesson 8-9の「オーバーラッピング」解説はネ申回だった。

*7:例: Lesson 1 より "I hope they don't mind." ここではテキスト解説に「節」(文中で使われる「小さな文」のこと)と、簡潔な定義が示されていますが、そもそも節や句といった要素がなんであったかはLesson 1では細かく議論しません。

*8:Lesson 7より "My ambition is to become an inspiring teacher." to 不定詞の存在はある程度は聴いたことがあるだろう、という前提でこの表現を紹介しています。ここでは「to のキブンは ➡ である」、という恒例の説明と組み合わせて、あくまで説明型として理解してくださいねという文脈の中で説明しています。to不定詞のきちんとした説明は2018年05月号の中で改めて展開される予定のようです。

*9:例: Lesson 1 より "Look at those kids dancing over there." ここでは「説明ルール」の一種として紹介するにとどめ、現在分詞による修飾の話はほぼ行っていません。「説明ルール」がわかっていれば、おのずと現在分詞のはたらきも十分把握できる、という立場に立っているからでしょう。

*10:これは、従来の英文法の説明を採用するとどうしても避けられなくなるものです。今回の『ラジオ英会話』では、そもそもSVOCMといった略語を原則として使わなくても済むように注意が払われています。そのため、品詞から理解する議論は、最低限に押さえられています。第一週で自動詞/他動詞の区別を論じていることで動詞v. の説明は一度終わらせていますし、また説明型第二回の時に{形容詞,名詞,前置詞句,動詞 -ing, 過去分詞形}なんでも説明になりますよ、と書いています(Lesson 7 参照)。こうすれば、補語C(Complement)の定義を導入せずとも済むわけです。こういう、「従来型の細かい術語を導入しないために、先取りしてメチャメチャ洗練された説明枠組みをこしらえておく」というムーヴが、大西&マクベイの今回のカリキュラムには多々見受けられるのです。タツジン!

*11:個人的に好きなGiA課題は、Lesson 9 "We remained confident despite the defeat."; Lesson 13 "I know a guy who is a wizard at fixing computers." などです。従来型英文法の言い回しでいうと、S remain C, despite X, 関係代名詞who名詞的用法, wizard at doing が使われているわけですが、そうした従来型の言い回しを意識せずに取り組めるための色んな伏線が、この課題にたどり着くまでに色々張り巡らされているのが素晴らしい。

*12:もうすこし解説します。I am keeping が「説明型」である、という時、SVCのVに当たる部分は、amになりますね。ところが、単に「S(主部)を見つけろ、V(述部/述語動詞)を見つけろ」という指示に従うだけなら、Vの部分が"am keeping" でもよい、ということになりかねない。英文解釈をしていく上でならbe doing 部分が述語動詞だ、と言っても差し支えはないんです。ただ、おそらく今回のラジオ英会話では、そういった構文解析風の「V」のとり方を禁欲させる方向で調整しているように思います。だから、「進行形は be doing と教わってきたでしょうが、感じ方を整えてください。これはあくまで説明型として考えましょう。そして keeping は、説明型(SVC)の説明部分、その場所にたまたま現在分詞 -ingが置かれているんです」と言っているのではないでしょうか。……勝手な推理なので、間違っていたらすみません。

*13:「整合するから、何なの?」というツッコミがありそうですが、これによって、実際に speaking/writing する時の気分が大きく変わりそうなんですよね。伝統的な学校英語であれば、「わたし→be doing→その他もろもろ」という流れで組み立てるところを、大西メソッドであれば「わたし、いまこんな状態!→その他もろもろ」という気分に沿って語彙を選んでくることができる。その時に、時制や態を、単に覚えたものでなく(過去完了形だからhad done!)、時間感覚や能動受動の気分に沿って自然と選ぶことができる。そのへんを後々重視したくて、今こうした布石を指導の中に織り込んでいるのかなー、などと思いながら聴いています。

*14:

英文解釈教室〈新装版〉

英文解釈教室〈新装版〉

ビジュアル英文解釈 (Part1) (駿台レクチャーシリーズ)

ビジュアル英文解釈 (Part1) (駿台レクチャーシリーズ)

ビジュアル英文解釈 (Part2) (駿台レクチャーシリーズ)

ビジュアル英文解釈 (Part2) (駿台レクチャーシリーズ)

実践ビジネス英語の回し方(2018年度版)

今年も杉田敏『実践ビジネス英語』*1が開講した。
www2.nhk.or.jp

実践ビジネス英語は、NHKによればCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)で言うところのC1レベルに該当するように組み立てられている。*2。資格試験でいえばTOEICTOEFLの長文会話に近い、難しめで洗練された言い回しの語彙を学ぶのに適したレベルである、ということだ。

TOEICにもTOEFLにも苦手意識を持っていたところ、3,4年前にこの講座の存在を知った。それから毎年、春先には「よっしやるぞ」と意気込んで、けれどそのたびに無残にも挫折していた。無残な結果に終わってきた理由は色々あるだろうけれど、つまるところ英語の自学自習のスタイルを築く努力がいかにも中途半端だったのだろう。
しかし今年はとりあえず半月ほど上手くいっている。NHK側の情報提供のあり方がより改良されたことによるものと、自分が実践ビジネス英語のリズムを把握できたこと、その両方が噛み合った結果だと思われる。(きっと、たぶん、ね)
2018年度に走りきれるかどうかは、やり続ける中でしか証されないだろうけれども、とりあえず今の見解を書き留めておく。

▼再放送教材の体制がより強固に

2018年度04月から、NHKの提供する「NHK語学」スマホアプリが非常に“使える”アプリになっていた。

NHKゴガク 語学講座

NHKゴガク 語学講座

  • NHK (Japan Broadcasting Corporation)
  • 教育
  • 無料
これまでも、Webブラウザ等でストリーミング放送は実施されており、実践ビジネス英語もその例に漏れずストリーミングが公開されていた。*3けれども、実際にブラウザを立ち上げて聴くというのは、リアルタイムで聴くのとはまた別の習慣づけを必要とする。これが結構しんどかった。
ところが、この語学アプリを開けば、一週間遅れで実践ビジネス英語の水木金の3日ぶんの音源が upload されており、しかもすぐに、(その週のあいだなら)何度でも、再生することができる。早い話、教材音源がこれまでよりさらに、グッと身近になったのである。これがまず大きかった。聴き逃したとしても、一週間遅れでよければ、続けていこうという意志を挫かれないで済むわけだ。

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▼「二週で六回ぶん」「まとめ音源は二週目の金曜日」のパターンを利用する

『実践ビジネス英語』は、毎週水木金の3日間、日に3回の再放送がある。09:15, 12:40, 23:20それぞれの時間から15分間放送される。(チャンネルはNHKラジオ第二
 そして、一単元は合計6回で構成されている。たとえば2018年04月のLesson1は、04/04から04/14までの期間で消化することになる。
 ところで、この一単元の第6回め、つまり単元の最終回では、単元内の第1回から第5回までに小分けで説明されてきたビニェット(会話劇)が、連結されて放送されることになる。したがって、二週間どれだけサボって聴き逃していたとしても、最悪第6回だけでも音源を確保しておけば、二週間ぶんのリスニング教材はその日にすべて回収できる、ということになる。月ごとに2回、録音機器等で録音しておけば、数ヶ月後であろうと復習を始めることができるはずだ。
 ただ、実際に月2回の「第6回」放送だけ確保すれば勉強が成り立つかというと、そういうわけでもない。実際、1回目から5回目までのそれぞれの節では、概ね15-20個程度のビジネス系英単語・熟語が記載されている。また一文一文がそれなりに complicated であり、一聴して完全にわかる、というものでもない。実際、聞いているぶんには、結構厳しい(少なくとも、自分のリスニング力の低さでは太刀打ちできない)。
 そんなわけで、自分は第6回を待ちながら、毎週水木金のどこかの時間で一度聴いて、いかに自分がそれらの語句を一聴して聞き取れなかったかを痛感しながら、それぞれを「そーゆー言い回し」として淡々と回収していくことにしている。ゲーマー的には、「死にゲー」の感覚に近い。初見で死んだ場所をひとつひとつ覚えて、次は死なないぞ(でもできれば初見で死にたくなかった……)という、一期一会感をはるか遠き理念としつつ、死に体でドンドコ進めていくのである。
 そうして5回分の語彙に関して、マーキングをし終えたら、改めて第6回の放送を待つ。そして、改めて「聴き取れなかった」「ついていけなかった」部分を再度抽出していく。そこで改めて、只管朗読のフェイズに入る。各放送回ごとに朗読することはもちろん推奨されるが、第6回が最後の水際なのだという決意で望むことにしている。それで、少なくとも自分の口の上で、詰まらず言えることを暫定的な目標とする。
 細かく書き記したが、要するに「月2回の、第6回が決戦の日(音源)だ」ということを念じること、その上で、自分なりに小課題の解決順序を組み立てていくということが、『実践ビジネス英語』から振り落とされないために大事なのではないか、ということだ。

▼教材はKindleでも紙でも良い(自分は紙を選んだ)

 これは完全に好みの問題になるが、自分は『実践ビジネス英語』については、物理書籍で調達している。同年度で始まった大西泰斗&ポール・クリス・マクベイらによる『ラジオ英会話』については、Kindleで購入することにした(「ラジオ英会話 2018年度」については、別途ブログ記事にする予定がある)。
 あくまで個人的な話になるが、ボキャビル系の作業をするときには、自分は紙上での方がマーキングの工夫をしやすいという実感がある。三菱鉛筆のプロパス・ウインドウのピンク*4が1本あれば、あとは以下の3種類の使い分けで線を引き続ける。

  • 自分にとって完全に【未知】【新規】の語句:全面的にマークする。
  • 自分にとって【既知】だが、【未習熟】な語句、あるいはそのひとまとまりで読む感覚をまだ得ていない一連なり:下線でマークする。
  • 途中、代名詞その他(something, one's, somebody など)でいろんなものが入りうる場所:カッコ書きでくくり、上記2つのマークから省略する。

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こういった工夫は、Kindle for iPadなどではまだやりづらい。OCRつきPDFで持っていればAdobe Acrobat for iPadその他のPDF書き込みアプリなどで多少できなくもないが、今は紙媒体のほうがマークしやすいし、なにより実践ビジネス英語はPDFで販売していない。ボキャビル目的なら紙の方がいい、と自分が判断しているのはそうした事情がある。

Amazon Echo with Radiko

 それから、春先にスマートスピーカーを導入した。Amazon Echo である*5。このスピーカー、ラジオストリーミングサービスの「Radiko」と提携しており、「アレクサ、Radikoを再生して」といえば、その地域のFM局の放送などが自由に掛けられるようになっている。
 そして折よく、2018年04月中旬から、NHKのラジオ局3局が、ふたたびRadikoで再生できるようになった。*6 来年度にはまたRadikoからは外れるかもしれないにしても、これでスマートフォンで「らじるらじる」立ち上げ→Bluetooth等でスピーカーで再生 という手順よりも手軽に、NHKラジオ第二を再生できるようになった。所定の時間の直前に「アレクサ、RadikoNHKラジオ第二を掛けて」と一言言えば、実践ビジネス英語がはじまるというわけだ。

こうした諸々の状況や工夫の組み立てが絡まりあって、今年度の実践ビジネス英語になんとかついて行けているようになった。これが5月、6月と続けていけるかはまた別の課題だが、少なくとも昨年度よりは、勝ち目のある状況を引き寄せられたことはまず素直に喜びたいし、こうした複合状況が今来ているのだということを、英語学習に興味のある友人にも周知しておきたいと思って、このメモを書き出してみた。一緒にやってゆきましょう。

追記:ところで、実際により多くの人におすすめしたい(そして実際に個々の局面で色んな人に推している)のが、2018年度に遠山顕と交代して開講された新・ラジオ英会話だ。語彙強化は実践ビジネス英語でやっているものの、文法の深い理解という点では、平易なレベルで解説しているはずの本講座に啓発されているところが非常に大きい。このレコメンドについてはまた後日記事にできたらと思っている。毎週月-金の06:45, 12:20, 21:45 それぞれのタイミングで15分間放送しているので、今日からでもどうぞ。
www2.nhk.or.jp

2017.02-

近況

 長い風邪で気弱に寝続けているうちに、今度はぎっくり腰に罹ってしまい、週末は痛みに怯えて過ごすことになった。Amazonから取り寄せたコルセット程度ではどうしようもなく、整形外科まで呻きながら歩いて行って(それでもまだ歩けるだけ良かった)、ロキソニン系の痛み止めを胃薬と一緒に処方してもらった。
 ぎっくり腰は、先週土曜に発症した。月曜夜に痛み止めを手に入れ、今日はだいぶマシになっている。それでも無痛というわけにはいかない。
 そもそものきっかけになっただろう風邪も治らない。もう一週間以上は悪寒か咳にやられている。マスクが手放せない。インフルエンザでないだけよかったが、治癒力が足りていない現状は中々つらい。
 昨年から二ヶ月ほどプリズナートレーニング*1を続けている。自宅/職場/公園のいずれかで合計4種類のメニューを週2回合計40分程度確保するだけのトレーニングだが、実施した次から3-4日は筋肉痛がやってくる。おかげで筋力は増えている。ただし体重はこのメニュー消化では思ったより減らない。減量は減量で別のメニューを立てる必要がありそうだ。……腰痛が落ちついた後に……。(プリズナートレーニングのせいで腰を駄目にしたわけではないと思うが、日常動作についてもう少し再検討する必要はある。胡座とか。)
年始から1月末までは『スターウォーズ 最後のジェダイ*2キングスマン ゴールデンサークル』*3『バーフバリ 王の凱旋』*4デビルマン crybaby』*5ゆるキャン△*6宇宙よりも遠い場所*7ポプテピピック*8などを観て過ごした。特に『バーフバリ』は素晴らしい。後編にいきなり飛び込んで、新しいインド映画の可能性を共有してほしい。『マッドマックス 怒りのデスロード』がそうだったように、今後も繰り返し各地の映画館で上映される作品になると思われる。『デビルマン CryBaby』も、昨年の『夜明け告げるルーの唄』の次のステージに進んだ湯浅作品の境地に立ち会えて、素晴らしいものだった。
仕事以外の読書はあまり捗っていないけれど、ノエル・キャロル『批評について』*9は、基本路線として肯定したい作品だった。佐藤亜紀『小説のストラテジー』*10で試みられていたような、作品評価の体系構築の営みは、このような論陣を張ることによって進めていけそうだという希望を見せてもらった。一方で、自分自身がそうした論陣を、好きな分野で引き受けることに倦んでしまったことを、思い出させる読書経験でもあった。
『批評について』を読んでから、日本語作文をする気になれなかったこれまでの状況が少し変わり、積んでいた書物を少しずつ崩せるようになってきた。心理的におかしかった部分を調節する働きが、『批評について』の中には含まれていたと感じている。

▼2018.02課題(年次目標に基づく)

*1:

プリズナートレーニング 圧倒的な強さを手に入れる究極の自重筋トレ

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  • 作者: ポール・ウェイド,山田雅久
  • 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
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*2:starwars.disney.co.jp

*3:

*4:

バーフバリ2 王の凱旋 [Blu-ray]

バーフバリ2 王の凱旋 [Blu-ray]

*5:

*6:

ゆるキャン△ 1 [Blu-ray]

ゆるキャン△ 1 [Blu-ray]

*7:

*8:

*9:

批評について: 芸術批評の哲学

批評について: 芸術批評の哲学

*10:

小説のストラテジー (ちくま文庫)

小説のストラテジー (ちくま文庫)

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2018-

目標の建て方について

  • 能力の上限を遥かに超えた目標を「目標」としない。(ここでいう「能力の上限を遥かに超えた目標」については、昨年までに建てたものの、結局達成しなかったような全ての目標が該当する、と考える。)
  • 理念的到達点を目指す場合、全てそれに近似した道のりとなるような量化目標に置換して、それを「目標」とする。
  • 量化目標はGoogleスプレッドシート/GoogleKeep/SimpleNote/iOSメモ/その他プレーンテキスト等で、csv形式でいつでも再処理を掛けられる形で管理する。
  • 量化された目標は、「達成目標」ではなく「慣習目標」とする。慣習化を目標とするものが幾つかコンビネーションとして組み合わさった結果として、無理なく「達成目標」が満たされるものとして、「慣習目標」の方を操作してゆく。したがって、「慣習目標」が達成されないときから「達成目標」について思い悩まないこと。【慣習先行達成後続の原則】
  • 開示可能な部分と開示の難しい部分とを分けつつ、開示の難しいものを常に意識する。文面等で開示不可能だからといって失念してはならない。

2018目標(上掲原則を採用)

  • しごと系列
    • しごとa(前半中に校了
    • しごとb:理論系(併せて、関連論文等消化)*1*2
    • しごとc:実証系(併せて、関連論文等消化)*3
    • 【結果目標】貯蓄+XX万円
  • 生活系列
    • リズナートレーニング:新人メニュー*4
    • ランニング:週2回(45-90分)
    • 二畳合気道:週1回
    • 瞑想的時間の確保:週2回以上(10-60分)
    • 睡眠:2300-0700
    • 豆/野菜/ヨーグルト/漬物等、日々の腸内環境を改善する食事、200日以上
    • 【結果目標】XX.0kg以下を達成
  • 趣味判断系列
    • オフライン作文:3000字以上×100本
    • 語学書:英語系3冊を順次暗唱読破
    • Python:『退屈なことはPythonにやらせよう』1冊まで*5
    • R:『Rによるやさしい統計学』1冊まで*6
    • 映画/映像作品:20+20本(映画館+ホームビデオ)*7
    • 小説:100作品以上*8
    • 趣味学術書:20冊以上
    • ファンク/ソウル/フュージョン系のフルアルバム10作品以上
    • キーボード/ドラム:週1回いずれかを触る
    • コンシューマゲーム:5本以上
    • シャドウランGM:2回以上
    • T&TGM:1回以上
  • 進行度を問わないもの

その他

今年もよろしくお願いいたします。

*1:最終的な作業規模によるが、論文50+,著作10+を目安とする

*2:オンライン読書会成立: 1クール以上、を含む

*3:最終的な作業規模によるが、論文50+,著作10+

*4:

プリズナートレーニング 圧倒的な強さを手に入れる究極の自重筋トレ

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*5:

*6:

Rによるやさしい統計学

Rによるやさしい統計学

*7:Netflix,AmazonPrime,Hulu等活用を目指す

*8:特に、ハヤカワSFのKindleを買っているため、それを中心に消化する

*9:

新課程 サクシード数学2+B―ベクトル、数列

新課程 サクシード数学2+B―ベクトル、数列

*10:

増補改訂版 新・リュミエール―フランス文法参考書

増補改訂版 新・リュミエール―フランス文法参考書

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2017.12.31

 自分のものでないプロジェクトでとりあえず生きてゆけてしまうことの、相対的なぬるゲー感を経験した一年だった。
 自分の生涯を賭して行うようなプロジェクトに関わっているときのような魂の震えを追い求めなくとも――持続性を忘却すれば――それなりに生きていけてしまう。自分が考えつくよりも先に出来ているプロジェクトには、かなり高い蓋然性でそれなりの合理性や狙いが付随しているし、それに知的興奮を覚えることも容易だ。それに、そうしたプロジェクトの重要性を他人に魅力的に紹介することも重要になってくる。だから、大きな仕事を為している人の部分的代弁をしようと試みるだけで、時は過ぎていく。
 何かに対して真面目であるポーズを取る気概というか、興奮のような気分も細り、基本的には、出力の弱い道ゆきとなった。適当すぎる、と言われても、ここ何年も、見る人が見れば演るべきことを為していない遊び人のようにしか見えなかったのだろうし、そうなれば excuse でわざわざ自分の境遇を取り繕う必要がどこにあるだろう。それはそれとして、自律性を取り戻すための手も打ち続けてはいるのだけれども。

実際、今年は自覚的によく遊んだ年だった。今年のGW中に行った『ミュシャ展』の素晴らしさについては既に過去記事で触れた。*1 京都・奈良で気になるところも、一通り行った。また、長らく宿題だった『P4G』*2、『Breaking Bad』全5シーズン*3、『Undertale』*4、『Va-11 Hall A』*5を消化することができた(Breaking Bad については、いつかレビュー記事を書いてみたい。洋ドラという形式の中で練り上げられた、素晴らしい文学作品だった)。夏は『ドラゴンクエストXI3DS*6を最後までやり通した。スマートフォンでは、FGOFate/Grand Order)のセイレム編と、『どうぶつタワーバトル』*7が優れていた。
 映画は劇場で23本見た。文句なしで今年のベストといえるのは20年ぶりの正続編となった『T2 トレインスポッティング*8、B級ながら様式美として最も琴線に触れたのが『ドクター・ストレンジ*9、アクションとして優れていたのは『ジョン・ウィック チャプター2』*10と『HIGH & LOW THE MOVIE 3: THE FINAL MISSION』*11、アニメ作品で優れていたのは『モアナと伝説の海』*12と『KUBO』*13、世に出たことを
祝いたいのが『虐殺器官*14、『ダンケルク*15、『ジョジョの奇妙な冒険〔実写版〕』*16、今後のマルチメディア展開を期待しているのが『ゴジラ 怪獣惑星』*17。『スターウォーズ EP8』と『ガールズ&パンツァー最終章 第一話』は来年劇場で観る。

 小説はほとんど読んでいなかったが、先日のハヤカワ一斉セールで36000円ほどKindleに突っ込んだ。当分読む小説には困らない。その他イベントとしては、東西のスガフェス*18*19に参加できたのがよかった。

 生活面の変化としては、今年前半は強歩(=強負荷散歩)にハマった。しかし後期に再び忙しくなって運動強度を落としたのを機に、二畳でできる合気道ストレッチと、『プリズナートレーニング』*20の新人メニューに従事するようになった。強歩する男、二畳稽古する男、次いで囚せられた男。
 万年筆も、憧れのスーベレーンM400緑縞*21を買い、それにペリカンインク4001暗緑*22を詰めて使っている。取り回しのいいiPad mini4*23を導入したおかげで、NetflixKindle の消費その他、暮らしの隙間でコンテンツを消費する時間が確保できるようになった(iPad通常版では新旧ともに寝ながら見続けることは難しかった)。

 来年の話は来年に。

*1:http://tricken.hatenablog.com/entry/2017/06/08/225900

*2:

ペルソナ4 ザ・ゴールデン - PSVita

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*3:

*4:https://undertale.jp/

*5:

VA-11 Hall-A (ヴァルハラ) - PSVita

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どうぶつタワーバトル

どうぶつタワーバトル

  • Yuta Yabuzaki
  • ゲーム
  • 無料

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*18:http://www.sugashikao.jp/sugafes/

*19:http://www.sugashikao.jp/sugafes_west/

*20:

プリズナートレーニング 圧倒的な強さを手に入れる究極の自重筋トレ

プリズナートレーニング 圧倒的な強さを手に入れる究極の自重筋トレ

  • 作者: ポール・ウェイド,山田雅久
  • 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
  • 発売日: 2017/07/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る

*21:

ペリカン 万年筆 F 細字 緑縞 スーベレーン M400 正規輸入品

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*23:

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藤原聖子『教科書の中の宗教:この奇妙な実態』(2011,岩波新書)

教科書の中の宗教――この奇妙な実態 (岩波新書)

教科書の中の宗教――この奇妙な実態 (岩波新書)

 この書籍は、2006年から2008年の間に行われた科研費基盤研究B「世界の公教育で宗教はどのように教えられているか:学校教科書の比較研究*1の調査研究の成果に基いて執筆されている。実際、この研究プロジェクト自体には大きな意義があったことと思われる。
 ただ、少なくとも「この岩波新書」一冊に限って言えば、科研費事業を通じて得られた観察が組織化されていないように見える。
 本書の構成がこのようになってしまった理由を推察するに、以下の点が、議論の収斂をみないまま個別に指摘されるにとどまっているためと思われる。

  • (1) 日本語圏の宗教教育の記述が、世俗的倫理を肯定するために粗雑に転用されていること。
  • (2) 日本の倫理教科書におけるキリスト教仏教の記述が多面にわたり誤謬やミスリードに満ちており、宗教学的理解として半端な記述のまま普及してしまっていること。
  • (3) 日本の倫理科におけるワーディングが、さらにセンター試験等の受験的都合により整理困難に陥っていること。
  • (4) 海外では「現代の宗教者」どうしでの文化多元主義的なコミュニケーションが宗教教育の主軸となっているのに、日本ではその導入が遅れている(あるいは難しい)こと。
  • (5) 日本の教科書会社にそもそも予算がないため、上記のような問題を解決に向かわせるような経済的余裕がないこと

 ひとつひとつの論点は、なるほど確かに重要である。そして、著者の参加した科研費プロジェクトは、主に (4) の状況を学術的に高度な水準で調査したことによって得られた知見であり、他国の先駆的な例と日本の教育状況との差をうまく伝えている。
 しかしながら、これらの(1)-(5) の問題は、同時に扱ってうまくいくようなものではなさそうである。問題の種類が微妙に異なっているからだ。そして本書の記述は、残念ながら、「それらの問題が、あるよね……」ということを紹介したところで、力尽きているようにも見える。
 
 結論だけに注目すれば、著者による理想的な宗教教育は「伝統的宗教と世俗的倫理の両方を知り、では自分はどうするのかを改めて考え」(p.216)てもらう機会を設けるものだと、読み取れる。しかし、本書を読み通しても、それを実際に日本語圏の倫理科教育で実現するためのロードマップの呈示にはほとんど至っていない。そのため、終盤に至っては、先に引用した部分である教科書原稿用のテキストが「ボツになってしまった」(p.216)と愚痴ることで締めくくってしまっている。

 だが、そうした結末を、単に著者の力量不足に還元してよいわけでもなさそうだ。同書の著者が、教科書執筆にあたっての座組について、このように述べているところからは、現場に立ち入って悩み抜いた著者の苦心が読み取れる:

 今回の〔引用者注:倫理科の教科書〕改訂にかかわる中で、筆者がもっともストレスを感じたのは、アドバイザーである高校の先生方に、出版社が会わせてくれなかったことである。どの出版社も、教科書の原稿に対して、何名かの高校教員に意見・要望を出してほしいと協力を依頼するようだが、少なくとも私がかかわったケースでは、ディスカッションの場はなかった。出版社の編集担当を介して、間接的にやりとりをして原稿を検討するのである。出版社に直接確認したわけではないので推測になるが、おそらくそうするのは、執筆者側が大学教員である場合、直接ひき合わせると高校の教員は遠慮して意見を言わなくなると思っているから、あるいはそのような検討会を設けると余分な時間と労力がかかるからではないか。検定を受けるために教科書制作にはタイムリミットがあるので、効率を優先させたいという事情もわかるから、長年の慣例に反してまで、協力者の先生と議論させてほしいとは言いだせなかった。だが、「伝言ゲーム」では、互いの意見の意図が十分にわからない。とくに今回のように、宗教に対する根本的な見方の違いから発する問題などは、時間をかけて話し合わなければ通じるものではない。
(同書 pp.200-201)

だが、それだけの重大な壁が立ちふさがっていることまで判明していたのであれば、いっそ高校の先生方へのインタビューも含めて、宗教教育学的な課題として踏み込んでいったほうがよい、とも言えないか。つまり、教科書会社に組織体力面で期待できないのであれば、ここから高校の倫理科教諭と連携して、教育実践の更新へと取り掛かるような、そうしたロードマップを敷き直す宣言を行ってもよかったのではないか。そしてともすれば、そうした方向での研究計画の実施ということさえ、可能ではないか。ifの話ではあるけれども、そのような方向性も示唆される記述だった。

『教科書の中の宗教』目次
001 1章 教科書が推進する宗教教育――日本は本当に政教分離
021 2章 なぜ宗派教育的なのか
055 3章 教科書が内包する宗教差別
117 4章 なぜ偏見・差別が見逃されてきたのか
137 5章 海外の論争と試行錯誤
181 6章 宗教を語りなおすために
223 あとがき
主要文献

2017.09-

近況

  • 08月中に誕生日を迎えました。お祝いの品を下さった方、ありがとうございました。書籍、お酒、食べ物、文具、いろいろ贈呈していただきました。恵まれた人生だ。
  • 先の見とおしはよかったりよくなかったり。いずれにせよ、それなりにできることを、そこそこやりながら生きています。情熱が一頃よりあるんだかないんだか、が自分ではわかりません。
  • 今の仕事については、伝える機会があれば人に伝えてる、という程度です。
  • ときどきの出来事に関するそのつどの正負に関わりなく、あまりによくわかんない人生すぎるため、人に説明するのを諦めてしまいました。でもそれでちょっと楽しくなってきた。今できる範囲で技能を挙げられればそれでいいや、って思って暮らしてます。
  • スガフェスWEST*1と、11月の『Va11-ha-ll-A』Vita版*2を楽しみにして生きています。
  • 日本語とも英語とも、向き合う時間が長くなってもあまり疲れなくなってきたのが一番うれしいことです。(昨年度は、読めるようにはなってきたけれど、まだすぐに疲れていました。)
  • ここ数ヶ月で食べて美味しかったものは、大阪ロッダグループのギャミラサ*3と、北野白梅町ヌーラーニのブラックマトンカレー*4、あと魚金秋葉原店の刺身盛り*5です。

活動方針

  • 発言数自体を以前の水準寄りに戻しつつあります。ただ、これ以上は増えなさそうです。
  • 友人知人を中心とした宣伝系ツイートはRTはするようになっていましたが、最近また多少増やしています。(単なる意見は、発言の良し悪し関係なく、変わらずRT対象から外しています。)
  • 読書記録のようなものは暫く書かないでいたのですが、公開してよいと思ったものについては書くようになりました。
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