手術と障害について
2024年01月に心臓の手術を受け、02月初頭に退院、その後2月中まで在宅療養をした。人工心肺を使って、5時間心臓を止めていたらしい。
病名は「大動脈弁閉鎖不全症」という。三尖弁であることの多い大動脈弁が先天的に二尖弁になっており、それが加齢にしたがってほつれていたという。この病を放置すると、血液の押し出し能力を低下させると同時に心筋の肥大を招き、ある日突然即死に至る、ということだった。数年前に大動脈乖離をやらかして生死の境を彷徨ったことのある父と同じ先天性遺伝だったことが後でわかった。
2023年06月の健康診断で発見された時点で、既に心臓は手術を行うべきボーダー基準をわずかに上回っていた。最初に掛かった心臓外科の外来の若い先生は様子を見る判断をしていたが、その後よりベテランの医師の先生が「若ければ若いほど手術の成功率が高まる」ということで、手術になった。その年は妻と同居の計画ならびに新婚旅行の準備を進めていたところだったので、未来に暗い影が差してしまったなと若干不安な気持ちになっていた。結果的には生還できてよかったのだけれども。健康診断で聴診器1本でこの異変を見つけてくれたK先生には、今でも感謝している(スーパードクターK!)。
縦20cmの手術痕が胸の上に残った。2週間のリハビリを経て退院した後も、体調不良は年末近くまで続いた。元々CON(Constitution; 病気への耐性を含む心身の強靭さ)が03程度しかない自分にはなかなかに厳しい試練が続いた。漢方を飲まずとも体調不良を感じなくなったのは11月も半ばになった頃だった。
もう少し老齢であれば、生体弁という選択肢もあったが、残り30年以上生きるつもりだったのでほぼ自動的に機械弁を選択することになった。機械弁ということは、ワーファリンを毎日服用することになる。いわゆる「血液がサラサラになる薬」というやつだ。このために、機械弁を埋め込んだ私は、身体障害者一級を取得することになった。主観的には身障者感に乏しいが、ワーファリンが尽きるとおそらく数週間で死に至るという意味では、生殺与奪の権を医療に乗っ取られている状態であり、それも身体障害者と言ってくれているのだろう。
その権利を医療に売り渡す代わりに私は赤い手帳を手に入れ、公共サービスの割引をいくらか受けられるようになった。その中で特にありがたいのが、市内の電車・バスを無料で乗車できる権利だ。無料で気軽に乗り継ぎができるようになり、気軽に動ける範囲が随分と広がった。また、1人でも100km超の移動であれば、JRも割引となる(同伴者がいれば移動距離に関わらず半額)。病気になったこと自体はこの身体に生まれついた宿命のようなものだったので、このような経緯で身障者になれたのはむしろ儲けものの類になるのかもしれない。働ける範囲で税金はしっかり払っていこうと思った。
2024年作業等
- DigraJで若手奨励賞を受賞した。ありがたいことです。
- 運営に関わるアナログゲームミュージアムのクラウドファンディングが目標達成。ありがたいことです。
- 働きながら共著論文が一本通せた。2025年中には公開される予定。
- 翻訳はうまくいっていない。夏過ぎに「1日20センテンス程度翻訳しよう!」と思い立ち数週間続けようとしてみたが、それも続かなかった。「1日1時間、何があっても腰を据える」などにするべきか、検討中だ。2025年中の完訳も、分量を考えると難しいかもしれない。そもそも英語翻訳をする作業机が家にないのも問題かもしれない。
- オンライン読書会にはあまり顔を出せなかった。谷川さんが主催しているゆるめの読書会でノエル・キャロル『ホラーの哲学』を読み通せたのは収穫だった。
2025年予定/計画
- メギド72が完結してしまうので、素晴らしい作品のためにも何かしておきたい。
- 翻訳は、今年中に全訳といかないまでも、せめて3章ぶんは終わらせたい。そのためには3ヶ月毎に1章程度の計画を練る必要がある。
- 翻訳以外にも、計画的に進めるべき理論研究があるはずなのだが、まず時間を決めて取り組まなければならない。
- 手術の後遺症にも負けなくなってきたので、今年は再度、身体を絞ることを実現したい。体重はあまり気にせず、shapeの改善に取り組む。
- 国内旅行1回と海外旅行1回をやっておきたい。円安が進みすぎてしまう前に。
その他の2024年中の思い出深い出来事
- 2024年10月には先輩・友人と和歌山地方へ旅行に出かけた。行楽行事で漬けた梅酒はまだ開封していない。
- 2024年末からの帰省は本当に久しぶりにゆっくり札幌で過ごせた。積雪の湿度を含んだ空気を吸うと元気になる。寒いけど。
- 野菜と肉・魚、両方の蒸し料理に対応できる体制が室内で整った。
▼作品受容等
- NHKラジオ『ニュースで学ぶ「現代英語」』がWebサイト込で素晴らしく、続けられている。
- 映像全般では連続テレビ小説『虎に翼』が何と言っても素晴らしかった。次いで『光る君へ』についても、平安貴族の描写と刀伊の入寇の扱いが良く、最後まで飽きずに見ることができた。
- 2024年ベスト映画鑑賞は『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』からの『ドキュメンタリーオブベイビーわるきゅーれ』二本立て。
- 2024年ベスト漫画鑑賞は『東京サラダボウル』全5巻。打ち切りが決まってしまったが、ドラマ化が発表され、重版も決まった。嬉しい。
- 2024年ベストビデオゲーム経験は『Animal Well』『SANABI』『長い冬のぼくら』。大作のおっかけとしては『Cyberpunk 2077』『龍が如く7』もよかった。
- 2024年ベストアナログゲーム経験は、和歌山旅行でやってみた『負けるな一茶』と、妻とやる『ドロッセルマイヤーさんの空論道』。『ファイナルファンタジーXIV TTRPG』スターターセットのGMもよかった。
- 『アフター6ジャンクション(1&2)』の曜日パートナーだったTBSアナウンサー宇内梨沙さんが2024年を以てパートナー卒業となり、その惜しさをきっかけとして、Podcastの過去アーカイヴを熱心に遡った。月見バーガー事件(URL)やOPトーク全集(URL)ほか、Spotifyに幾つかまとめを用意しているので、彼女のおもしろフリートークのファンの方には聴いてほしい。
booth.pm
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