Ankiで英語句を収集する:BBC News のコロナウイルス関連情報まとめ記事を例に

昨日、こんなツイートがbuzzツイートとして回ってきました。

ここで書かれたことはどれも優れた学習法だと考えています。英語の堪能な友人も昨年の後半から児童書の通読を試していましたし、先日私が投稿した『アイアンマン』や『インクレディブル・ハルク』の記事も、先程のツイートで書かれた第二の作業と言って差し支えないと思います。

tricken.hatenablog.com
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ただ、こちらの方の意見にあるうち、第三項目にある「ニュースの単語を調べる」、というのは、最も意外性がない一方で、「実際にどう読み、どう拾い集めるのか」についてあまり語られていないな、と思いました。
ところでこの「英語ニュースを読む」という勉強について、自分は何度も挑戦しては失敗し続けてきました。けれども最近ようやくAnki との出会いを通じて、この英語ニュースを通じた語句拾いの作業をやり遂げられるようになりました。
そこで、今日はそのやり方を、作業メモついでに残してみようと思います。

I. 教材を用意する

BBC, CNN, TIME, Huffpost 等の、そこそこメジャーな英語圏ニュースサイトのトップページに飛びます。スマホタブレット端末がある場合は、それぞれ対応するアプリがありますので、それをダウンロードしてもよいでしょう(相対的に広告が少なくてみやすい傾向があります)

今回はBBC Newsから1つの記事を選び出しました。

www.bbc.com

II. わからない英語句をみつけ、調べる

プレーンテキストファイル(拡張子が".txt"になるファイルのことです)が作れるエディタに、わからない単語をメモってゆきましょう。
調べた結果は、"単語: 〜〜" のように、単語と説明の間に明確な区切りを仕掛けるようにしましょう。あとでAnkiに一括インポートするためです。
自分の作業結果は以下のようになりました。

quarantine: 検疫
Hubei province: 湖北省
a public gathering: 一般参賀天皇等の、貴人に対する)
tested positive: 陽性反応が出る test positive の過去形・過去分詞;原文はan American woman tested positive for the virus in Malaysia after leaving a cruise liner docked off the coast of Cambodia と過去分詞句で使われる
off the coast: 沖合
repatriate: 強制送還する;
transmissibility: 伝染性
National Institute of Allergy and Infectious Diseases: アメリカ国立アレルギー・感染症研究所
decompress: 減圧する→楽になる
pursuant: a.準じた・従った adv.準じて・従って
disembark: 陸揚げする・船などから人や貨物を下ろす
Russian embassy: ロシア大使館
pharmacist: 薬剤師・製薬者
disinfect: 殺菌消毒する
in a bid to stop the virus spreading.: in a bid to doで「todoを目指して」という成句、「ウイルスの拡散を食い止めることを目指して」という意味になる
curb the outbreak: 感染拡大を抑制(curb)する
epidemic prevention: 流行病の予防→防疫(類義語: quarantine)
hepatitis: 肝炎
a new strain of: (病原体や動植物などの)新種
acute respiratory disease: 急性の呼吸器疾患

調べて抜き書きする際のコツは以下です:

  • わからない語句について調べる辞書は、何を使っても良い。ただし、検索しやすいものにすること。iPhoneであれば辞書アプリがなくともウィズダム英和が標準搭載されている*1。また物書堂リーダーズ英和などは詳しい単語も載っており、ニュースサイトレベルの英語句であれば、珍しい固有名以外のほとんどがヒットする。
  • 辞書は紙で引いても構わないが、コピペしてAnkiで回すことが前提なので、文字列をかんたんにコピペできる電子辞書・Web辞書の方がよいかもしれない。
  • 動詞や名詞などの変化形を無理に原形に戻す必要はない。たとえば複数形を単数形に、過去分詞を原形に戻すという作業は、慣れるまでひと手間かかる。その上で、検索した結果として原形がわかった後は、(←見つけた時の綴り)といったメモを残して、原形と変化形の両方の出会いを記録しておくとよい。
  • 単語ではなく句単位(フレーズと言ってもいいし、イディオムと言ってもよい)の表現が出てきた場合、(1) ひとまずそのまとまりとしての意味を書く。(2) 余裕があれば、その句を構成する単語ごとに追加で調べてもよい。ただし、全体の作業量が多くてダルくなりそうなら、省略して構わないものとする。たとえば上記の事例では、respiratory(a. 呼吸器の)は、単語としては記録しなかった。
  • embassy(n. 大使館)単体で意味がわかっても、Russian embassy と出てきた時にすこしまごついたのであれば、それは語の共起表現に慣れていないということでもある(この分野の語学スキルのことを「コロケーション」と呼ぶ)。コロケーションが弱いなと思ったら、そうした句も迷わず記録すること。私はこのコロケーション分野が弱い自覚があるため、embassyがわかっていても敢えてこの句を学習対象として登録することがある。
  • まれに、英語圏では馴染みのある言い回しでありつつ、日本の英和では出てこない言い回しがある。そういう時は遠慮なくGoogle検索に頼る。Weblio, 英辞郎on the Web、海外の俗語などを扱うUrban Dictionary などであれば結構ヒットすることもある。
  • 直訳はできるが文脈的によく理解できない語句については、とりあえず保留しておいて、あとでSNSなどで議論してみよう。英語学習が好きな人と繋がっていれば、いいコメントをもらえることもあるかも。
  • 語句を調べ尽くしてもわからない下りには、大抵英文法上のかなりマニアックな活用が隠れていたりする。語彙を増やすだけなら忘れていいけれど、英文法にも真面目にアタックしておきたい人は、英文法書も1冊よいのを持っておいていいかも。おすすめは江川泰一郎『英文法解説』。

III. Ankiに一括登録する

Ankiに復習対象としてカード登録をします。AnkiはPCやAndroid OSなどで無料で使えますが、iOS用だけ有料です。最初はPCで使うとよいでしょう。

apps.ankiweb.net
readingmonkey.blog.fc2.com

PCでインポートする場合の手順を以下のTweetに画像つきで書きました。*2

もし、それまでやっていたデッキのカードと重複が起きた場合は、以下のページの指示に従って適宜重複を検索し、削除していってください。
wikiwiki.jp

以上の手順をいろんな英語記事に対して仕掛けることで、Ankiと英語ニュースサイトを往復した語彙強化(ボキャビル;vocaburary building)がはかどりやすくなるはずです。おためしあれ。

おまけ1:全訳というエクストリームボキャビル

 おもしろかった英語圏の記事は、翻訳してみるのも面白いと思います。
 私も最近、イギリスのWebニュースにあった日本食ブームの記事を全訳して、色々勉強になりました。
tricken.hatenablog.com
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おまけ2: Googleスプレッドシート上でgoogletranslate関数を使って一気に翻訳データを取得する

この記事をレビューしてくださった方から提案がありましたので追記しておきます(ありがとうございます)。
Googleの展開するサービスの中に「Google翻訳」と「Googleスプレッドシート」があります。
そしてGoogleスプレッドシートには、GOOGLETRANSLATE関数 を使うことで、特定のセルの語を別の言語に翻訳するという機能があります。

gotcha.alc.co.jp

これを応用して、今回紹介した英語句のプレーンテキスト作成を簡略化してみることが可能です。

i. Googleスプレッドシートで新規ファイルを開き、googletranslate関数を使う

Googleスプレッドシートのページを開きます。(Googleのアカウントを取得していること前提です)

www.google.com

そして新規ファイルを作成します。作ったら、以下の関数の書式を確認してください。

=googletranslate(訳したいセル,"en","ja")

ここでは、A列に語句が入ると考えて、以下のようなセルをB2に作ってみます。

=googletranslate(B2,"en","ja")

#VALUE! と表示が出ますが、今は気にしないでおきましょう。

ii. ニュース記事から英語句を取得する

 本記事で紹介したやり方と同じです。ただし、辞書を調べる必要はありません。英語の綴りを拾うだけです。半角コロンも使わなくてOKです。

iii. A列に取得したテキストファイルをコピペする

 開始列はA2セルからがよいでしょう。タブ区切りなどを使っていない限り、A2から下に英語句がリストとして貼付されるはずです。

iv. B2セルに仕込んでおいたGOOGLETRANSLATE関数を繰り返し適用する

 B2セルの四角い囲みの右下あたりにマウスカーソルを当ててください。マウスカーソルが十字(クロスヘア)に変化します。それを、A列の最後の語句のセルと同じところまでドラッグ&ドロップしてください。GOOGLETRANSLATE関数がA列の各々のセルを参照するかたちで適用されます。

以上を適用した結果のファイルを公開しておきます。

docs.google.com

使い勝手の評価としては、

  • 単語・固有名・決まり文句については上手に訳される。
  • 一部の単語、特に名詞としても動詞としても使える多義的な語ほど、本文の意味と合致しない場合が出てくる。
  • 2語以上の組み合わせで書かれる句(・熟語・イディオム)で、定型表現にも当てはまらないものについては、かなり頓珍漢な訳が出力される傾向がある。

です。そのため、対応する訳語を、単語中心に手早く洗い出すには向いている手法になります。
熟語については、ひとまずデータを仕上げた後に手動で調べることになりそうですね。

おまけ2のおまけ:最新のGOOGLE翻訳エンジンをGoogle Apps script(GAS)で走らせる

さらにこんな情報もいただきました。

紹介された記事は以下です。
qiita.com

先程のGOOGLE翻訳スプレッドシートの2タブ目に、これの実行結果も置いておきました。精度は確かに、こちらのほうが明らかに高いようです。また、フルセンテンスで翻訳するときにも大いに役立ちそうですね(単語の拾得という点では少し趣旨が違ってきますが)。

時間のある方は、各自のGoogleスプレッドシートに、翻訳用のGASを埋め込んで実行してみてください。

*1:アプリを追加せずに、iPhoneの内蔵辞書を活用可しよう! | マイナビニュース

*2:Hatena Fotolifeは画像が見えづらくなるので最近使っていない。